近ごろ、講演を時々頼まれるようになった。
私は、人の長話をじっと聞いていると、じりじりしてくる時もあるが、話す方はそう嫌いでもない。若いころは落語家になったら面白かろうと思ったこともあるし、いずれ歳をとって閑になったら、路上で辻説法でも始めたらどんなものかと考えたこともある。もっとも、辻説法では変人扱いされて石が飛んできそうなので、僧籍に入って寺々を回り、法話をしたいがと、住職の義兄に話したが、真(ま)に受けてはくれなかった。
頼まれ講演のたぐいは、昨年2度、一昨年も2度行なったが、だんだんネタ切れになってくる。寺々の法話なら旅芸人よろしく同じネタを何度も使えるが、講演は地元が多いのでそうもゆかない。2月予定の次回は、考えあぐねた上で「“劣化の時代”をどう生きるか」に決めた。
家族の崩壊やモラルの喪失、格差社会の深刻化など、世の中の“劣化”がひどくなってきたのはここ10年ぐらいの間だろうか。かつて存在していた心地よい人間関係やわきまえのある常識が、いつの間にか予想外の速さで劣化を進め、いまや私たちの生活の至る所で矛盾が噴き出し、歯止めのかかる気配がない。そうした現象のいくつかは本欄でも取り上げ、近著「虫瞰(ちゅうかん)の風景」にも収録したが、加速する劣化はなぜ起こるのか、将来に向かってどう生きればよいのか、最近気になっていることを、自分なりに見つめてみるよい機会になるのではと思った。
社会学者でも宗教家でもない私が取り上げるには、このテーマはかなり手ごわいが、一生活者の視点から、手に負えない課題の出口を模索してみたい。
講演は2月9日午前10時から、西東京市コール田無(田無町3丁目、田無駅北口徒歩7分)で。入場無料。主催は西東京市選挙管理委員会ほか。問い合わせは同会(TEL:042-438-4090)へ。