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水曜いんたびゅう
私の主張
子供自身の育つ力を信じて
「子育ち応援団」著者、保育士  松本 道子

 保育所民営化、幼保一体化、教育基本法改正、いじめ問題――子供が育つ環境が揺れるなか、小平市在住の保育士、松本道子さん(58)が、さきごろ「子育ち応援団―現役保育士が伝える省エネ子育て術」(文芸社)を発行した。38年の保育士の経験を元に、子育てのコツなどを盛り込んだもので、「子供自身が持っている、育つ力を伸ばしてあげて」とメッセージを寄せる。その主張を聞いた。【取材記者・谷 隆一】


――著書のタイトルを、「子育て応援団」ではなく、「子育ち」とした狙いは。
 「子育ての当事者は親ですが、子育ちとすれば、親、祖父母、地域社会、保育士・先生、そして子供たち同士――と、子供を取り囲むすべてのものを網羅すると思うんです。今の子育ては、『親がひっぱっていかなければ』という姿勢が強すぎるような気がします。しかし、子供は、子供同士でケンカしたり助け合ったりしながら育ち合う力があります。子供自身の育つ力を、もっと大人に信じてほしいと思っています」

――今の子育て、と言いますが、どんな状況ですか。
 「お母さん方が一生懸命頑張っているんですが、子供には少し負担になっている気がします。たとえば、保育所にお母さんが迎えに来ますよね。そのときに、子供が駄々をこね、『帰りたくない』と泣くことがあります。子供は場面が突然変わるときに抵抗をするものなので、その反応はごく自然のものなんですが、最近は、『どうして?』『何かあったの?』とあれこれ聞き、過剰に心配するお母さんが多い。それで、親も子ももっと楽できる“省エネ子育て術”があるんだよ、と伝えたくて、本を書いたわけです」

――そういうのは、最近の特徴的な現象なんですか。
 「実感としては、20年くらい前から、親・子の変化を感じています。理由の一つには、子供が少なくなり、細かくかかわっていけるというのがあると思います。それと、『豊かなことがいいことだ』という社会状況の中で育てられ、完璧主義の親が増えているのかもしれません」

 「また、テレビの影響もあるように思います。100%そうとは言いませんし、語弊があるかもしれませんが、最近は、テレビのせいで、考える力、イメージする力が十分に身についていない子が増えているように思うんです。赤ちゃんが言葉を習得するには、ゆっくりした言葉が必要なんですが、テレビは、速い言葉で次々と情報を送ってきますよね。さらに、映像があり、動きもある。そういうのに慣れると、考えたり、イメージする力がつかないんです」

――それなら、子供にはテレビを見せるべきではない?
 「お母さん方に、そうは言えませんよ。かつてと違い、子供が外で群れ遊ぶという状況がありません。遊び場も少ないし、子供の安全もあやしくなっている。核家族化などで、お母さんの子育て負担も大きい。テレビに子守をさせなければ、家事をまともにすることができないんです」

――では、出口がない。
 「私は団塊世代に期待しています。これから時間ができ、パワーもある。子供に積極的にかかわり、子育てを温かく見守る社会に変えていく。子育て中のお母さん方は、町中で冷たい視線を感じていますよ。道を歩くにも、スミマセン、スミマセン、という感じで、乳母車を押している。そういう状況を変え、みんなで子育てを支えていくような社会にしたい。社会を作るのはすべての世代の全員ですが、団塊世代には、その仕掛けをしていってほしいんです。子供と交流する機会を持つとか、小さい子供がいるお宅の玄関先をさりげなく掃除してあげるとか、子育て体験を話すとか、無理せずできることは、たくさんあると思います」

――「育つ力」について、詳しく教えてください。
 「30年ほど前、4年にわたって、大学教授の『乳児の遊びの実践研究』に参加したことがあるんです。そこで驚いたんですが、大人が遊んであげなくても、子供は自分であれこれ遊びを見つけていくことを目の当たりにしました。一つの例なんですが、4カ月くらい毎日、みんなの遊びや動きを見ているだけの子がいました。遊ぼうとしないので、親御さんも私たちも心配したんですが、ある日、その子は突然、わーっとすごい勢いで遊びだしたんです。それまで、どの子がどんなふうに遊んでいたかをちゃんと見て覚えていて、眺めていたいろいろなことを試してみるんですね。そういうふうに、いろいろな子がいるんです。みんな、それぞれちゃんと力を持っている。なのに、子供が、こうかな、ああかな、と考えているところで、『これはこうやって遊ぶのよ』とすぐに手を出す大人が多い。そうすると、子供は持っている力を伸ばしていけないですよね。ほんのちょっとの刺激を与えるだけで、あとは見守っていく、ということが大切なんだと思います」

――子供の育ち合い、とおっしゃいますが、今のいじめ問題はどう見ていますか。
 「人間も動物ですから、弱肉強食の遺伝子を持っているのだと思います。0歳児でさえ、泣いている子をポカリとたたくことがあるんですよ。だから、いじめたり、いじめられたり、ということは、誰にでも起こりうることだと思っています。ただ、命まで奪ってしまう現代のいじめは、どうみても異常です。では、なぜ異常なことが起こっているのか? 極論すれば、それはやはり、大人が導いたものだと思います。いま、多くの保育所が、ブランコやすべり台を危ないからと撤去しています。ケガしないようにと、高いところにも登らせません。その子に登れる力があると分かっていても、です。今の子たちはケンカもできません。ケガをする、相手に悪い、という理由で、親が止めてしまうからです。また、止めなければ、あの子のお母さんは社会性がない、と言われてしまうんです。そうして、子供の好奇心や自立心の芽を大人が『危ないから』と摘み取り、群れ遊ぶこともないから、コミュニケーション力や協調性も養われない。その一方で、テレビからの強い刺激に慣れている。いま、いじめの責任は家庭にある、いや学校だ、などと悪者探しがされていますが、そんな暇はないと思います。私たちは、まっとうな人間が育つように、子供自身の力を信じて、応援していかなければいけないんです」



 「子育ち応援団」は、書店での注文かインターネット書店で購入できる。四六判、220ページ、998円。


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