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水曜いんたびゅう
私の主張
地方自治の実現へ、市はもっと主体性を
住基ネット訴訟・西東京の会代表 樋口大貳(だいじ)

 2002年8月の住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)稼動の際に、住民票に11ケタの番号(住民票コード)を付定されたのは人格権、プライバシーの侵害にあたるとして、西東京市民3人が同市市長にその取り消しを求めていた裁判で、東京地方裁判所(杉原則彦裁判長)は7月14日、市民の訴えを却下した。

 原告らは、「住民基本台帳に関する事務は自治事務なのに、住基ネットへの接続にあたって、市はどのような判断をしたのか説明責任を果たしていない」などとして、裁判を、市と話し合う場と位置づけていた。その狙いは果たされたのか。原告の一人で、同裁判などの原告と支援者でつくる「住基ネット訴訟・西東京の会」代表の樋口大貳さん(41)に聞いた。【取材記者・谷 隆一】

――原告の敗訴でしたが。
 「正直なところ、敗訴は想定の範囲内。ただ、予想以上にレベルの低い判決でした。というのは、『住民票コードの付定に処分性があるか』という、原告・被告ともに争点にしていなかったことが、判決文の中で第一の争点にされていたからです。結論が先にあって、内容に踏み込まずに判断できる争点を、でっちあげたと言うしかありません」

――公判での、市とのやり取りについては、どう評価を。
 「市の担当者が毎回裁判に来ていましたが、後ろに座っていただけ。国の代理人である総務省から来た担当者が、被告代理人として全部指揮していました。市町村が自分たちの責任と判断で行う自治事務について、『市としてどうなのか』と問い続けているのに、『自分たちはこういう考えでやっています』というロジックはまったくなく、終始一貫して、こういうのを国が決めたことですから、という姿勢だったわけです。市には、もう少し当事者として考えてほしかったと思います」

――被告代理人が、杉並区が起こしていた訴訟と同じだったそうですね。
 「裁判長も同じで、10時から私たち、10時30分から杉並区の公判、ということもありました。同じ法廷で、裁判長も被告代理人もそのままで、原告だけ入れ替わったという感じで。杉並区の裁判を傍聴していたら、裁判長の言っている内容もほとんど同じでした。杉並区は国と都を訴えていたのですが、私たちが訴えていたのは西東京市です。私たちの場合には、国は関係ないんです。それなのに、被告代理人は、2つの裁判で同じことをしゃべっていた。不思議な光景でした」(編集部注 このときの裁判長は、人事異動で途中交替している)

――裁判中に、市長が替わりました。
 「影響はまったくないです。市の職員にも誠実に対応していただきました。たぶん、職員のみなさんも、個人個人では問題性を認識しているのだと思えます。ただ、国対市という関係の中に置かれると、本音が言えなくなるのかな、と。でも、本当はそこが一番大事なところで、今回の真のテーマは、『地方自治の実現』ということにあったんです。住基ネットは一つの素材であって、要は、地方自治は誰のために存在するのか、住民と市と国とは、それぞれがどういう関係の立ち位置にあるのか、ということを確認したかったんです」
 「今回の判決では、住基ネットは全国どこでも国の行政事務を効率化するメリットがある、とされました。でもそれは、国のメリットです。どうして、国のメリットのために市が予算を組む必要があるのでしょうか。国のメリットなら国にやらせなさいという話で、市にメリットがないなら、やめるべきです。やめたくてもやめられないなら、うるさい市民がいて、訴えられてしょうがないんですよ、と理由づければいい。訴えた理由の一つには、我々が訴えますから、やめるきっかけにしてください、という気持ちもあったんです。私たちは、市と市民は利害を共有していて、国に対して共闘できると考えているんです」

――住基ネットに対しての一番の要求は何ですか。

 「すぐにできるのは、西東京市が接続しないこと。国立市や福島県矢祭町は現在離脱していますが、住民が何か大変な損害をこうむっているかといえば、そんなことはない。つまり、本来必要ないものということです」

――自治ということですが、市民の民意で接続しようとなったら、どうしますか。
 「多数決で決めていいことと悪いことがある。民意で決めるのは、自分が参加するかどうか、ということで、全員の参加を強制することはできないと思います。プライバシーや人格権にかかわる問題を、あなたのプライバシーは漏れても構いません、と他人が決めることはできないと思いますから。離脱が無理なら、メリットを感じる人だけが住基ネットに参加すればいいと思います」

――選択制ということですね。市に働きかけてみては。
 「いや、原告の総体としては、選択制は本来は望ましくない。住民にとって、金銭面など、ムダが多すぎますから。それに、一番言いたいのは、住民にメリットがないなら、市は住民の利益を守ってちゃんと国と対決してくださいよ、ということなんです」


 判決を受け、坂口光治市長は「住民基本台帳ネットワークシステムの適法性、有効性について、認められたものと理解しております。今後も市として住民基本台帳ネットワークシステムの適切な運用に努めてまいります」とコメントしている。
 なお、原告3人は判決を不服とし、控訴を手続き中。また、住基ネットをめぐっては、西東京市民124人が、住民票コードを付定され精神的苦痛を受けたとして、同市市長を相手に損害賠償を求める裁判を行っている。


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