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われら隣人
第513回
貫井敏子(主婦)

 「今日もゴイサギいないねぇ。今年はあったかいから」と工場の警備員に声を掛けられたかと思えば、散歩する人に、「今日はカワセミいましたか?」と尋ねられる。
 東久留米市内の自宅に近い黒目川に沿った散策道を行きかう人たちの” 有名人”になったのは、20年以上にわたる義母の介護や仕事の疲労が重なって、糖尿病を悪化させた2年ほど前から。
 健康のためにと、1日1万歩を目標に歩きだし、数カ月後には、インスリン注射を必要としなくなった。
 しかし、春夏秋冬、晴れても降っても徒歩か自転車で、欠かさず地元の川を観察するようになったのは、「空飛ぶ宝石」と形容されるカワセミとの出会いがあったからだ。

「なにもない町」の大自然を追って

その日も黒目川を散歩していて、青とオレンジの配色が鮮やかな小鳥が、水の上を飛んでいくのを見つけた。

 まさか、とは思ったが、カワセミだった。

 結婚して40年ほど東久留米市に住んできたが、自然の清流を好むカワセミが、地元に生息しているとはまったく知らなかった。

 翌日、自宅にあったフィルム式の小型カメラを手に、再び川沿いを歩くと、特徴のある甲高い鳴き声が聞こえ、とっさにシャッターを切った。「きれいな姿が撮れた」と勢いこんで現像したが、そこに写っていたのは、米粒大のカワセミだった。

 2年前のこの体験が、漫然と歩いていた日課を、自らの意志で歩くことへと一変させた。

 カワセミの姿を美しく撮影したい。そして、地元の自然の豊かさを伝えたい――。その思いを実現するための工夫を始めたのだった。

 まず、デジタルカメラを購入。これで、フィルムや現像の費用を気にせず、たくさんシャッターを切ることができるようになった。「失敗作」は、データを消去してしまえばいいことも覚えた。

 パソコンを触ったこともないが、プリンターをつなぐだけで、自宅で簡単に印刷できることも分かった。いまでも、「デジカメを発明した人には感謝したい」という。

 今年3月からは、300ミリの望遠レンズ付きの一眼レフのデジカメに切り替えた。重宝しているのは、1秒間に5コマ撮影できる連写機能だ。

 フィルム式なら、プロでもない限り使われなかった連写機能だが、デジカメなら、素人でもどんどん使える。そして、カワセミだけでなく、コサギやオオサギが飛ぶ姿を写真に収められるようになった。

 写真サークルに入ったこともなく、まったくの独学で覚えた撮影のコツは、鳥を目ではなく、鳴き声を聞き分けて、耳で追うこと。それから、格好のいい姿を見せてくれるまでじっと待つこと。

 普通に歩けば1時間とかからない道のりを、3時間ほどかけて往復することもある。

 いまも、毎日100枚ほどの写真を撮る。その中から、お気に入りの作品だけを残す。こうして、これまでに消去されなかった作品は、1万点以上にのぼる。

 地元商店街の人から「写真をホームページに使いたい」と言われれば、すぐに使ってもらうし、黒目川に生息したタヌキの一家の写真が、東久留米市市民プラザの会報の表紙を飾ったこともある。が、いちばんうれしいのは、自分の写真を見た地元に暮らす人が、「こんないいところに住んでいるとは知らなかった」と驚く瞬間だ。

 そのときには、「私も知らなかったのよ、病気をするまでは」と答えている。

 そして、住民自身が、「なにもない町」と形容することもある、この地を自慢できる仲間が、また一人増えることを願っている。

 ◇ぬくい・としこ 1944年、東京都北区赤羽生まれ。62歳。主婦。東久留米市金山町在住。現在は、夫と2人暮らし。 【取材記者・木瀬貴吉】

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履歴
現役ママが子育て応援 東久留米(2008年3月19日)
ネットで子育てをサポート−育児中の情報を自ら発信(2006年7月19日)
「お父さんもいっしょ!」西東京市のサークルがミュージカル上演(2006年5月31日)
「おいしい」を体験、学校・家庭・地域で食育(2006年4月26日)
平日夜の小児救急が拡充(2005年4月13日)



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