東洋医学は「全体性」の医療だといいます。
この全体性という言葉は、長い歴史の中で言葉としてのみ飛び交い、その本質は失われ、まったく理解されることはなくなっていました。
手技療法家が東洋医学の世界に足を踏み入れるとき、最初の第一歩はおそらく自己相似性の問題だと思います。冬の寒い朝、窓ガラスにできる氷の結晶は、私には美しい宝石のように思えました。そして、その結晶は、どこの一部分を拡大してみても、もとの結晶と同じ構造をしています。これが、自然界における自己相似性です。
よく、足の裏に全身のツボがある、と言う人がいます。耳に全身のツボがある、と言う人もいます。実は、体のどんな小さな一部分にも、全身のツボがあるのです。これが、部分の中に全体を含むという東洋医学の全体性です。
そして、この全体性は、人体の内側のみにとどまることができません。私たち一人ひとりの中に、まるごと世界が内在しているからです。
いま、現代人の心は世界から何を手に入れようかという思いに終始しています。高収入を求め、社会的地位や名誉を得ようと努力します。
しかし、手技療法家にとって、このようなことは意味がありません。社会的に勝ちえたと高ぶる人も、乞食(こじき)のような生活をしている人も、重い病気で寝たきりの人も、孤独な老人も、すべては己の中に内在しているのです。これは、聖書の中の「すべての人にキリストを見る」という一節にも似ているように思えます。そして私はそこに、手技療法家として歩む道を見いだすのです。
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